本ケーススタディの概要
ケーススタディ#1では建物の情報や案件(不具合)の情報をCSVとして一覧にして提供する際の項目選定について掲載しました。この場合は建物や不具合など、システムに登録した情報そのものをCSVとして提供する要望に対する対応でしたが、それに加えて不具合の蓄積データを分析して分析結果の提供を求める例なども出て来ました。そこでこのチュートリアルはその様な要望を集めて、それらに対する対応を検討します。
不具合履歴に関する要望
ある自治体の仕様書に「業務期間中における不良箇所や対応経緯等を継続的に把握するため、同じ箇所について複数年にわたる指摘の履歴や対応結果等も含めてデータ更新を行うものとする」という記述がありました。「同じ箇所」が何を指すのかは文面だけからは分かりませんが、施設管理という業務の性格上、例えば下表の幅広い内容も含んでいると考えられるのではないでしょうか。これ以外にも多様な分析は可能ですので、ご要望を頂ければ追記していきたいと考えています。
「箇所」の理解と想定される対応 | |
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同じ部位、同じ設備 | ここでは、例えばある特定の小学校の「1階」の「音楽室」の「空調機」に何度も繰り返して不具合が発生する様なケースを把握したいという趣旨と理解します。 この場合、不具合が発生し箇所を示すデータモデルである「設備(Device)」や「部位(BuildingComplnent)」の情報がちゃんと登録されている事が必要となります。「部位」や「設備」の項目には個々の部位や設備を識別する「設備ID」や「部位ID」があります。不具合を登録するデータモデルである「案件(Complaint)」の項目には「部位ID(refComponent)」があり、この項目にはは「設備ID」や「部位ID」が格納されていますので、この項目で名寄せ(ソート)することで、同じ部位や同じ設備で発生した不具合を探す事ができます。 同様に、ケーススタディ#1で作成した「案件一覧」であれば、「部位/設備名称」という項目がありますので、この項目で名寄せすると同じ部位や同じ設備で発生した不具合を探す事ができます。尚、ケーススタディ#1では部位や案件の名称は同じ名前が無い様に命名してあります。 |
同じ場所 | ここでは、例えばある特定の小学校の「1階」の「音楽室」の「天井」で「雨漏り」が発生し修繕したが、その後同じ「音楽室」で「異臭」が発生したケース様な因果関係が疑われる様なケースを把握したいという趣旨と理解します。 この場合は、不具合を登録するデータモデルである「案件(Complaint)」の項目である「場所(zones)」で名寄せする事で同じ場所で発生した不具合である事が把握できます。 同様に、ケーススタディ#1で作成した「案件一覧」でも同様に、「場所」を分解した項目である「場所大分類」「場所中分類」「場所小分類」がありますので、これらの項目で名寄せすると同じ場所で発生した不具合を探す事ができます。 |
同じ機種の設備 | ここでは、例えば設置場所は異なるが、同じ機種で不具合が多発するケースを把握したいという趣旨と理解します。 この要望に定型的に応えるのは困難です。これは「同じ機種」という意味が不具合の解析時には幅広く考えるべきであるためです。例えば、多くの設備では色や付属品が異なると「別の機種」という解釈になっています。例えば、空調機の配管が右から出ているのか左から出ているのかで、型番が違う事があります。恐らく不具合の解析時には色や付属品の違いは無視して分析した方が良いでしょう。尚、お客様の要望によりオプションを変更できるような設備では、機種が同じでも厳密には構成が異なる場合がありますので、この点も考えておく必要があるかもしれません。従ってこの様な要望に対しては、「案件(Complaint)」の項目である「部位ID(refComponent)」が指す先の「設備(Device)」の項目である「設備種別(category)」や、「機種ID(refDeviceModel)」が指す「機種(DeviceModel)」の項目である「ブランド名(brandName)」「メーカ名(manufacturerName)」「モデル名(modelName)」などの情報を提供するCSV内に埋めておき、これらの項目でソートして提供する事で、似た機種がCSV上で近い行で出現するようにする事が効果的かもしれません。 ケーススタディ#1で作成した「案件一覧」では、「部位ID(refComponent)」の項目をCSVの項目に追加する事が有効です。この項目には「設備ID」が格納されており、ケーススタディの「設備ID」の命名規則では整備IDにはメーカや製造番号が含まれていますから、「部位ID」でソートする事で、同じ機種と思われる設備の不具合が近い行に並びます。 |
同じ部材の部位 | 前項とよく似ていますが、ここでは床材のある種のタイルが良く破損するというケースを把握したいという趣旨と理解します。 この場合は、「案件(Complaint)」の項目である「現象」と「部位(BuildingComplnent)」の「部位種別」が一致するケースと捉える事が出来ます。例のケースであれば「現象」は“ひび割れ・クラック”や“はがれ”であると共に、「部位種別」は”床”であるケースとなります。但し、床材が何であるのかは現在の共通データ仕様には項目がありませんから、同じ部材の床材が破損したのかどうかは個別に確認する必要があります。 ケーススタディ#1で作成した「案件一覧」では、「部位概要」と「現象概要」でソートすれば良いでしょう。 |