共通データ仕様 / 項目に登録する用語の定義 (Enumeration)

「用語」とは

■登録用語を予め定義する必要性

 情報交換やデータ分析を行う場合、帳票の項目に登録される「用語」がまちまちだと困ります。例えば、子供が学校の壁にいたずら書きをした場合に施設管理の事業者が学校のオーナーに報告する「不具合レポート」という帳票あったと仮定すると、その不具合レポートを作成する際に不具合の現象として「汚損」「塗料付着」「汚れ」「いたずら書き」など色々な表現方法が混在してしまうことが予想されます。そこで、登録時には、予め決まった用語を登録する様に示し合わせておきます。この予め用語の選択肢を登録しておく機能を、Excelなどの表計算ソフトではプルダウンメニューとかドロップダウンメニューと呼びますが、同じように予め用語を定義しておく手法は実世界の帳票でもコンピュータでも良く活用されます。

 登録しても良い用語を予め決めておくと、情報交換やデータ分析が容易になるだけでなく、データ登録時の作業員の手間も削減できる可能性があります。例えば、表計算ソフトの様にプルダウンメニューを用意しておくことで作業者がイチイチ文字を打ち込む手間が避けられます。一方、データの値は一旦登録してしまうと、変換や名寄せが難しく、共通化すべきデータ仕様の中でもっとも重要なものです。

■用語の使い方

 現時点では下記の用語の一覧は単に用語が並んでいるだけです。勿論このままでプルダウンメニュー等にして活用頂いても良いのですが、他にも以下の様な使い方が見られます。

  • 分類してプルダウンメニューを階層化する
    例えば、「施設の部位」には「基礎」や「床」など建物自身の部位と、「フェンス」「門扉」などの建物外の部位、更には各種設備が混在しています。そこで、プルダウンメニューを階層化して、「施設の部位」を「建物内部」「建物外部」「敷地上」に分ける方法や、設備の種類ごとに分けておく方法があります。これにより、プルダウンメニューが短くなるなどの効果があります
  • 更に細かな情報を選択できるようにする
    例えば、「施設の部位」には「屋上」という用語が定義されています。施設管理の観点では、その屋上がどの様な部材でできているのかを分析したい場合があります。その様な場合、前項同様にプルダウンメニューを階層化し、下記の用語集よりも細かな単位で選択可能とする使い方も可能です。例えば、屋上であれば、「大分類:建物外部、中分類:屋上、小分類:屋上床(アスファルト露出防水)」などとする方法が考えられます。この例では中分類が共通データ仕様に従った用語という事になります。
  • 部位や設備と現象を結び付ける
    「不具合の原因」や「不具合の現象」は多くの場合部位や設備の関係があります。そこで、プルダウンメニューを階層化して上位階層に部位や設備を登録する方法があります。この場合、上位階層は必ずしも共通データ仕様を正しく採用する必要はありません。例えば、「天井/床」という複数の部位をまとめた階層の下に「汚損」「陥没」「雨漏り」などの用語が並んでいても構いません。

この様に利用するシステムや現場の現状に合わせて使い方を工夫して頂ければと考えています。

項目に登録する用語の一覧のインデックス

■法人を表現する帳票に登録する用語の一覧
 地方公共団体や民間団体などの各種法人に関する用語の定義です。汎用的に用いられることを期待しています。

■施設を表現する帳票に登録する用語の一覧
 施設・施設が入居する建物、建物が立地する土地、施設に設置する各種設備などに関係する用語の定義です。主に、公共施設の管理業務において、施設の基本情報になると共に、事業者間の引継ぎや連絡などを効率化します。

  • 建物の種別 (BuildingCategory)
    建物の用途区分を表現する用語を例示しています。この記載されている用語に限定するための規定ではなく、参考とするための例示です。内容は「建築基準法施行規則(別記様式)」に記載している建築物用途区分です。実際に何を登録するのかは、関係者間で調整する必要があります。
  • 建物の用途 (BuildingUsage)
    建物の用途を表現する用語の一覧です。内容は「都市計画基礎調査実施要領(平成 3 年 5 月国土交通省都市局)」に準拠しています。
  • 土地の用途 (LandUsage)
    コア・データモデルの土地の用途を表現する用語の一覧です。内容は「都市計画基礎調査実施要領 (平成 3 年 5 月国土交通省都市局)」の土地コードの区分です
  • 土地の用途地域(LandUseZone)
    土地の用途地域を表現する用語の一覧です。内容は「都市計画法」の用途地域の定義です。

■いろいな帳票で共通に用いられる用語の一覧
 公共施設や施設管理に限らず、広く一般的な帳票で利用されると思われる値の定義です。

  • 連絡先の種類 (ContactPointType)
    連絡先の種類を表す用語です。ContactPointに複数の連絡先を登録する場合に連絡先の種類をcontactTypeという項目に登録します。
  • 制御対象 (ControlledProperty)
    センサや制御機器などの各種デバイスが検知や操作の対象とするものを表現する用語の一覧です。
  • ID種別 (IdentificatonType)
    各種IDを登録するためのパーツである”IdentificationGroup”にIDを登録する際、IDの種別を表現するための用語の一覧です。

■施設管理の帳票に記載する用語の一覧
 施設を管理する際に発生事象に関して登録する値を共通化するための用語の定義です。主に、公共施設の管理業務において、日々の点検や修繕をレポートする際に利用します。

技術情報

■「用語の一覧」について

 登録しても良い用語が決まっている項目の事を「列挙型」の項目だと表現します。登録しても良い一つひとつの用語、または用語の塊りを「列挙子」または「列挙型メンバ」と呼びます。列挙型や列挙子の事をENUMとも呼びます。これはイーナムと読むことが多いのですが、元々の英単語はenumerationなので、エナムと読む場合もありません。他にも、「選択肢」「プルダウンリスト」「ドロップダウンリスト」など多様な読み方があります。一部の言語では列挙型メンバの定義順序に意味がありますが、本規定では定義順序は意味を持ちません。

 本データ仕様に準拠したと称するには、ここに開示する用語の一覧に従った値でデータを登録する必要があります。繰返しになりますが、本仕様は団体間のデータ交換や都市OSにデータ登録するための仕様ですので、各事業者独自のシステム内まで準拠する必要はありません。また、用語によっては開示ている一覧以外の文字列を登録することも許容している場合がありますので、必ず各用語の説明を確認してください

■用語の一覧の見方

 各用語定義の見方は以下の通りです。

  • 登録する用語: 項目に登録しても良い用語の一覧です
  • 定義: 各用語の説明です

 各用語定義には技術情報も掲載されていますが、技術情報の各項目は以下の意味を持ちます。

  • 定義名: 定義に与えられた名称です。データモデルやデータパーツの説明から参照するためにつけられた名前です
  • 継承元、参照元: 用語定義のもととなった規定類です
  • URI: 定義名には他の団体等で策定したものと同名の可能性があるため、識別するためのURLです。但し、JSON-LDには用語の定義は規定されていませんので、協議会独自の活動となります
  • 補足: 文字通り、補足です

■[参考] 用語の語彙の違い

 GIFにはコア語彙が納められていますが、この場合の語彙は一般的な日本語としての語彙とは全く違う概念です。一般的な語彙は単語の総称の事を指しますので共通データ仕様の用語と似ていますが、コア語彙でいう語彙は「住所」や「氏名」などと言ったものが、どの様な情報から構成されているかをまとめたものです。詳しくはコラムをご覧ください。

■用語のダウンロード

 用語の一覧をExcelファイルで提供しています。FMシステムに用語をインポートする際は、このExcelファイルをFMシステムの仕様に合わせて加工/形式変換してご利用下さい。尚、「土地の用途(LandUsage)」については、都市計画基礎調査実施要領に従い複数の意味合いの用語がまとめて登録されていますので、必要に応じて取捨選択してご利用下さい。