[付録] デジタルは難しい?
近所の皆さんとお話ししていると良く「私はもう年寄りだからデジタルはわからない」という方がいらっしゃいます。恐らくそれは筆者も含めたエンジニアや行政やメディアの怠慢が生んだ誤解の様な気がしています。何故かというと、デジタルが分からないという方に「テレビはご覧になりますか」と聞くと必ず「うん、良く見るとよ」などという答えが返ってきます。テレビだけでなく自動車も電話も全てデジタルの塊りです。でもご近所の方はそれを「デジタル」には分類しておらず、難しいとは感じていません。何故か。。。
デジタルにはデジタル技術を活用した通信・金融・制御・認識などの各種機能がありますが、もうひとつデジタル特有インタフェースというものがあります。インタフェースとは、PCや案内表示板などの操作端末やスマホなどの携帯端末があります。自動車やテレビの場合はアナログ時代の操作性をそのまま維持したままでデジタル化し、デジタル特有のインタフェース(テレビならdボタンなど)は知らなくても操作できるように工夫されています。つまり、インタフェースはアナログ風なのです。これに対して、スマホに代表されるデジタル機器はアナログ時代とは全く異なるインタフェースにになってしまいました。これがデジタルアレルギーを作っているのではないでしょうか。つまり、デジタルアレルギーではなく新インタフェースアレルギーなのだと思います。
例えば防災関係者と話をしていると、災害に備えて年寄り向けのスマホ教室が必要だという話が出てきたりします。平時にデジタルインタフェースに慣れていただく事は勿論大事だと思いますが、実際に災害が発生した時にはデジタル特有のインタフェースをできるだけ排除してはどうでしょうか。例えば避難所の出入り口をゲートの無い顔認証にするとか、スマホへの情報通知だけでなく壁新聞を廊下に張り出すとか、AIによる会話型の各種申請書作成とか、いろいろと手はあると思います。
防災だけでなく、病院の受付でもマイナンバーカードの顔認証も同様です。顔認証の際には情報を共有して良いかなど毎回同じで質問が繰り返されます。何とかならないでしょうかねぇ。大体あんな箱に顔を近づけて顔認証する意味が分かりません。顔認証は雑踏の中でも認識可能なくらい技術は進んでいますから、カメラ付きの小型のディスプレイで充分なはずなんですが。更に言えば、元々の保険証は顔写真の無いカードでした。それに対しマイナンバーカードは顔写真付きのカードなので格段にセキュリティーレベルは向上しています。そうであれば、デジタル的な認証が不得意であれば単なるフォトIDとして使う事も可能なはずです。情報共有するかどうかはどこかの時点で一度だけオプトインすれば良いだけです。例えば、マイナンバーカードの更新時とかですね。繰り返しますが、元々は顔写真もない低セキュリティーのカードだったのですから。利用者にデジタルなインタフェースを強要するのは余り賢いデジタル化とは言えないような気がします。今後は生成AIなどを活用した会話的なインタフェースが提供され、「今時スマホなんて古ーい」と言われる時代が来るような気がしています。