PPP共通データ仕様協議会について

 PPP共通データ仕様協議会(以下、「本協議会」)は特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会(以下「PFI協会」)内の部会活動であり、企業や団体間でやりとりする電子データのデータ仕様(電子化した各種帳票の形式などの約束事)の共通化を促進するためのコミュニティーです。PFI協会は官民連携や公民連携などと呼ばれる活動を進める団体で、会員様は主に自治体と民間企業です。自治体の会員様は、人口カバー率で93%程度に達しています。PFI協会では、官民連携のカタチがICTの分野に拡がっていく状況をとらえ、従来からスマートシティに関する普及活動を進めてきました。その結果、更にICT分野での官民連携を拡大していくためにはコンピューター間でデータを交換する前提となる「都市OS(データ連携基盤)」の整備や「データ仕様」の共通化が必須との認識に至り、2021年にPFI協会内に新たにPPP共通データ仕様協議会(当初の名称は都市OS利活用協議会でした)と言う部会活動を設置いたしました。

電子データと共通化の動向と課題

 既に記述しましたが、「データ仕様」とは、情報をやり取りするための電子データ(電子化した帳票)に関する取り決め事です。つまり、電子データのひな形や項目に登録する用語や数値に関するルールなど、決めごと全般を指しています。この電子データのやりとりは以前はITの専門家しか関係していませんでした。例えば、製造業のサプライチェーンの自動化、流通業の受発注や物流の自動化などは企業間や業界でデータ仕様を共通化されているために実現可能となっています。一方、必ずしもITの専門家ではない一般の自治体職員や会社の社員もPCなどの活用で電子データを個人や部門単位で活用していました。団体内の社内システム(庁内システム)もそのシステムを主管する部門がそれぞれ登録や活用のルールを決めていました。それらの電子データは手作業で入力している場合が多く、時には各種帳票などから打ち直すケースも見受けられました。以下にITの専門家向けと非専門家向けの電子データの特徴をまとめました。

IT専門家向けの電子データ非専門家向けの電子データ
データ仕様の共通化業界などで共通化されている部門や個人単位で共通化
電子データの特徴細かく定義されていて、一見して何を意味しているのか分からない。例えば米国英単語を結合した形式や、URLなどで記述されている部門や個人が通常の業務で使う用語や数値で記述されている。例えば、項目名や登録する用語の多くは日本語になっている
電子データの生成者情報が発生した組織が電子データを生成し、基本的にそのまま流通する事を意図して設計してある(Once Onlyの原則)情報を利用する組織や個人が情報を収集して電子データを生成する事が多い
共通化の主体業界団体や標準化団体が主体となり、各国政府などが後押ししている個人や部門であり、組織を超えた共通化の主体は存在しない

この様に、専門家向けと非専門家向けの電子データは様相が大きく異なり、専門家向けの電子データを専門家ではない人や組織に提供しても利用は困難だということが分かります。

 デジタル化の波はITの専門家だけでなく、専門家ではない人や組織にも押し寄せてきました。また同時に、情報を受け取る人や組織が自身が電子データを二次利用するために、電子データの提供を受けるニーズも増えてきました。例えば、自治体が民間に作業を発注する際に、その報告等を電子データで提出してもらう様なケースです。そうする事で電子データを受け取る側の作業が軽減されます。ここで一つ大きな問題が発生しました。従来はITの専門家ではない人や組織は自分で電子データを生成していましたから、電子データのデータ仕様の不整合は問題ではありませんでした。これに対し、組織を超えて電子データで情報をやりとりする場合は、電子データの登録者と利用者が異なる状況となりました。ITの専門家ではない人や組織がそれぞれがバラバラにデータ仕様を決めていましたから、データの登録者が異なれば登録されるデータも異なる事態になってしまいました。

協議会の必要性

 企業や団体間でやりとりする全ての電子データのデータ仕様(電子化した各種帳票=電子帳票の約束事)をトップダウンで完璧に定義することは現実的ではありません。余りに膨大な種類の電子帳票を定義しなくてはなりませんし、人の生活や企業の活動自体がどんどん変わっていってしまいますので電子データのデータ仕様もどんどん改版していく必要があります。従って、情報を持っている団体や情報が欲しい団体が集まり、共にニーズとアイデアを持ち寄ってデータ仕様を決める「コミュニティー」が必要となります。前出のITの専門家向けのデータ仕様では、仕様を共通化する主体を設置する事は出来ますが、非専門家向けのデータ仕様では主体は現時点では存在しません。また、非専門家向けのデータ仕様は広く一般に公開され、新しいニーズやアイデアによって進化させていく必要もあります。従ってこのコミュニティーでは、当初は単純で限られた電子帳票から共通化する事になりますが、時間をかけて徐々に対象とする情報の範囲を拡大していくことになります。PFI協会は、このコミュニティーとして本協議会を設置すると共に、共通化した仕様を一般に公開するためにこのホームページを開設しました。

 尚、PPP共通データ仕様協議会は多様な自治体や民間団体に所属している方々が参加することが可能です。個人での参加も可能です。勉強や情報収集のためだけに参加する事も構いませんし、自社が持っている仕様を公開するために参加することも構いません。現在の参加メンバはこちらをご覧ください。参加方法はこちらに記載してあります。

データ仕様を共通化する活動

 本協議会が進めているデータ仕様を共通化する活動は、大きく分けて、仕様共通化の意義や成果を広める活動、仕様策定に関する活動、そして仕様策定後に継続して仕様を進化させる活動の三つに分けられます。以下、順番に紹介します。

〇仕様共通化の意義や成果を広める活動
 本協議会では、包括施設管理やデータ仕様に関心がある自治体や事業者を直接訪問して説明する活動を積極的に進めています。また、各種セミナーに講師を派遣し、共通データ仕様の普及に努めます。更に、不定期ですが先進自治体や有識者を招いた各種セミナーにて講演活動も進めています。また、少し技術寄りですが、「都市OS勉強会」など、市販の本では得られないような知識も得られます。

〇仕様策定に関する活動
 共通化するデータ仕様の検討は、WG(ワーキンググループ)を協議会内に設置して検討します。現在(2025-10-03)、施設管理WG、給食センタWG、およびセンサデータWGを設置すると共に、都市公園WG、オープンデータWG、および効果検証WGの設立検討を進めています。施設管理WGでは学校・庁舎・公民館などの身の回りの公共施設を管理し自治体に報告する際のデータ仕様を議論しています。包括施設管理やPFIで施設管理に使うデータ仕様はこのWGで検討しています。給食センタWGは文字通り給食センタの管理業務で自治体に報告する際のデータ仕様を議論していますが、給食センタは設置している設備も厨房設備と呼ばれる特殊なものがあるため、独立したWGを設置しています。センサデータWGは施設に設置してある設備に付属するセンサ類の出力値や指示値を電子的に授受する際のデータ仕様について議論しています。センサは施設管理以外にも多様な現場で使われますから、施設管理WGとは別のWGとして運用しています。都市公園WGは遊具など公園にある設備群や植栽群などを管理し自治体に報告する際のデータ仕様を議論しています。効果検証WGは電子データを実際に分析し、例えば施設の老朽化がどの様に進行していくのか、保全方法がどの様な効果をもたらすのかを検証できないか、設立検討しています。最後にオープンデータですが、現在多くの自治体はデジタル庁が定めている「自治体標準オープンデータセット」に準拠してオープンデータを公開しているのですが、これをエリア・データ連携基盤でも公開する際のデータ仕様について議論する方向で設置を検討しています。

 各WGには本協議会のメンバであれば誰でも参加可能ですが、必要に応じて外部の有識者も参加頂いてデータ仕様の検討を進めます。

 尚、PPP共通データ仕様協議会は新たにデータ仕様を策定する事を目的としている訳ではありません。従って、WGの活動は既存の仕様を収集し、どの仕様が良いか検討し、足りない部分があれば補完する作業となります。

〇仕様策定後の活動
 WGでデータ仕様を策定し、協議会で承認されたら、本ホームページに公開します。公開した仕様は誰でも利用可能です。データ仕様に対する新たなニーズやアイデアを見つけたら更に議論を重ねて仕様を強化していきます。従って、本ページに公開している仕様は「こうすべきだ」「この範囲で設計しなさい」という、データモデルの利用者を縛るものではありません。具体的な利用方法は利用ルールに記載しました。