Column (No. 3)

[付録] ワンスオンリーとOnce only

 デジタル庁の国の行政手続オンライン化の3原則にワンスオンリーというものがあります。デジタル庁の説明では、ワンスオンリーとは「一度提出した情報は二度提出が不要」と言う事だと説明しています。この説明は国の行政手続オンライン化の原則ですから別に間違いではないのですが、一般的に言うOnce onlyとは異なっています。そこでまたChatGPTに聞いてみましょう。

You

 Once Onlyとは何ですか

ChatGPT

 Once Only(一度だけ)は、デジタル化の原則の一つであり、個人が同じ情報を複数の組織1や部門に何度も提供することを避けるための概念です。この概念によれば、個人が一度提供した情報は、その情報を必要とする他の組織や部門でも再利用されるべきです。つまり、個人が情報を一度提供すれば、それを再利用してさまざまなサービスや手続きを行うことができるようになります。

 Once Onlyの原則は、情報の重複入力や不必要な手続きを減らし、個人や組織の負担を軽減し、効率性を高めることを目的としています。また、個人情報の適切な管理とプライバシー保護を強調しています。個人情報は個人の了解のもとで収集および使用されるべきであり、再利用される際には適切なセキュリティおよびプライバシーの保護が必要です。

 Once Onlyの原則は、デジタル政府やデジタルビジネスの分野で広く採用されており、情報の共有と再利用を通じてサービスの提供を効率化し、顧客エクスペリエンスを向上させることを目指しています。

 このOnce Onlyの説明は正しいと思います。つまり、「ワンスオンリー」は行政の窓口等での手続きの限られた領域の話をしていますが、Once Onlyは一度どこかのコンピュータに登録した情報は(本人の了解のもと)必要なコンピュータに届けられサービスを届けられるというものです。

 例えば、ある市区町村から他所の市区町村に引っ越した場合、新住居の不動産屋での契約、現住所での転出届、引っ越し業者への住所登録、郵便局への転送届け、金融機関への転居届け、新住所での転入届け、マイナンバーカードの書き換えなどあまたの届けが必要です。転入届と転出届に至っては、役所への出頭を求める始末です。新住所を決めるのは不動産屋さんででしょうから、例えば不動産屋に頼むと、不動産屋のコンピュータを通じて必要な届出を全てやってくれると便利ですよね。

 もっと社会的な課題としてはCOVID-19が流行っていた時に医療関係者が毎日深夜残業して政府のwebに情報を手打ちしていましたが、殆どの情報はカルテシステム(電カル)にあるでしょうから、Once Onlyの原則に従ってIoTの技術を使っていれカルテシステムの情報を政府のサイトに提出すれば、医者は残業せずに、政府はリアルタイムに状況を把握できたはず2ですよね。

 勿論、セキュリティーや「本人の了解」をどう担保するのかなど技術的な課題や制度的な課題も多々あると思いますが、これを目指していくのがデジタルと言う事になります。Faxによる情報伝達をシステム化したものをデジタルと言ってはちょっと恥ずかしいということになりますね。

[付録] マシンリーダブル

 マシンリーダブルという言葉は年々歳々変化している様に思いますが、あらゆるデータをマシンリーダブルに変化させていく事がデジタル化には必須となります。以下、筆者が考えるマシンリーダブルであるという要件は四つあります。満たさない場合にマシンリーダブルではないと言い張るつもりはありませんが、ご参考までに記載します。

  1. コンピュータによる可読性
    文字通り、マシンリーダブルの最も基本的な特性です。コンピュータにより読み取れるという意味です。「紙であってもスキャナーがあれば読み込める」などとは言わないでくださいね。やはりネットワークでやり取りしたりファイルとしてコンピュータ内に格納できたりする必要がありますよね。
  2. コンピュータが理解できる形式
    可読性という意味では、jpegなどの写真の形式やpfdなどの文書の形式もマシンリーダブルなのですが、これでは利用するのに不便です。csv、XML、jsonなど色々な形式がありますが、コンピュータにより誤解なく理解できる形式である事が望ましいです。
  3. 共通化されている仕様
    コンピュータが理解できる形式であっても、仕様が異なると活用できません。例えば、データの中に登録されている用語がバラバラだと正しく集計などの処理をする事は難しいです。そこで、データ仕様が共通化されている事が条件となります。
  4. 公開されている仕様
    この条件はあまり聞いたことがありませんが、筆者としてはこの条件の大事だと考えています。仕様が共通化されていても、その仕様が公開されていないと利用できません。今後世の中のデジタル化を進めていくには、仕様が公開されている事が必要です。

 今後はカタログに登録されている、各種識別子にIRI3が定義されているなども条件に加わるかもしれません。日本も先進国に負けない様にデジタル化を進めて行きたいものですね。


  1. 「組織や部門」とは法人や法人内の部門と言う意味です(ChatGPTに確認しました) ↩︎
  2. 実際にはカルテシステム(電カル)がそれほど普及していない事もあり、デジタルの恩恵にあずかれるのは大きな病院や、先進的な病院や、先生が若い病院に限られるかもしれません ↩︎
  3. 識別子とは一意に識別できる(区別して認識できる)名前(文字列)です。例えば、項目名などがあります。IRIとはURLを拡張した概念で、現時点ではURLと解釈して構いません。IRIが定義してあると、例えば同じ「住所」という項目名の定義を考えても、住民登録してある場所の場合もあれば、実際に住んでいる場所の場合もあれば、郵便物を届けて欲しい場所の場合もあるかもしれません。IRI(URL)は世界で同じものはありませんから、IRIを定義してあると同じ定義なのかどうかを確認できます。例えば項目名が「住所.a.jp」と記載いされていれば「住所.b.jp」とは番う定義の住所であるという事が分かります。この「住所.a.jp」というURLっぽい識別子がIRIと呼ばれるものです ↩︎