ここからは、共通データ仕様に関し更に技術的に深く説明します。一部繰返しになりますが、ご容赦下さい。
帳票の仕様(データ仕様)を共通化するとは
コンピュータ用の帳票は一般的な人間が使う帳票と類似している事は既に述べました。従って、帳票の仕様として決めなくてはならない事も同じです。具体的には、以下の3点です。
- 帳票類の体系を共通化
業務を実装する場合、ひとつの帳票だけでは済まず数多くの帳票が必要です。従って、帳票群の体系を決める必要があります。体系とは、単にどの様な帳票があるかだけでなく、帳票間の関係も決めるという意味です。 - 各帳票のフォーマットの共通化
個々の帳票にどの様な項目を盛り込むか、そして、各項目にどの様な名前(項目名)を付けるかを決める必要があります。 - それらの帳票に登録する用語や表現の共通化
帳票が同じでも、登録されている用語や数値の単位がバラバラだと意味がありません。例えば、ある事業者がバスのことを「バス」と登録しているのに、別の事業者が「乗合自動車」と登録していたのでは手間がかかってしまいます。同様に郵便番号という項目に3桁の郵便番号と7桁の郵便番号が混在していたのでは、情報の価値が下がってしまいます。この様に、各帳票の各項目にはどんな用語や単位を使って登録するかについても共通化しておくのが望ましいです。
技術用語
コンピュータ用の帳票は一般的な人間が使う帳票と類似していますが実際に使われる用語は結構違います。次表は用語の比較表です。
人間の作業における呼び方 | コンピュータの仕事に関する技術用語 | 本節以降の記述 |
---|---|---|
帳票の仕様、帳票のひな形 | データモデル | データモデル |
記入済みの帳票 | エンティティ (Entity) | Entity |
帳票の項目、欄 | 項目、アトリビュート、プロパティー | Attribute |
帳票の項目に登録する用語や数値 | 値、バリュー | 値 |
帳票の項目に登録しても良い用語群 | プルダウンメニュー、ドロップダウンメニュー、列挙型メンバ、Enum | Enum |
帳票の束 | データセット(*1)、データモデル(*2) | (該当なし) |
帳票群に関する取り決め | データ仕様、オントロジー | データ仕様 |
帳票をやりとりする窓口 | API | API |
帳票間の関係 | リンク、リレーションシップ、リレーション | リンク(*3)、関係(*4) |
*1: データセットという用語は必ずしも同一種類のデータ全体という意味ではなく、ファイルやデータの塊りという意味でも用いられます
*2: 技術用語に同一種類(Entity type)のデータ全体を指すものはないため、同一データモデルのEntity全体をデータモデルと表現する場合があります
*3: リンクは、個々のデータモデルやEntityに実装される、関係を表す仕組みを指します
*4: 関係は、データモデル間の関係全体を指します
共通データ仕様に準拠するとは
本共通データ仕様は多目的に策定してありますが、全ての目的に使えるデータ仕様になっている訳ではありません。従って、準拠すると言っても、本共通データ仕様だけでシステムの実装やプログラムの開発は出来ません。そこで、本共通データ仕様への準拠をする際には、以下をお願いしております。
- 包括施設管理業務委託において、自治体と委託事業者間の情報のやりとりに関するもの
- データ仕様を策定する際には、個々にサイロに設計するのではなく、本ホームページに掲載しているデータ仕様を採用してください。データ仕様を採用する際には、共通データ仕様に記載してある通りにデータ仕様を策定しても構いませんし、機械的に変換できる様に策定しても構いません。機械的に変換するとはどういうことを指しているのかについては後述します。
- 掲載しているデータ仕様に不足があるときには、追加すべき仕様を本協議会に提案してください。この提案は、具体的な仕様でも構いませんし、「こんな情報も追加したいのだけれど」という相談でも構いません。但し、ご提案には本協議会に参加することが必要です。
- 提案は、協議会内で共有され、議論されます。議論の結果はデータ仕様に反映され、一般に公開されます
- 包括施設管理業務以外の業務の目的で、企業や団体にまたがって公共施設に関するデータを活用する場合。例えば、観光アプリで博物館などの観光施設の情報を活用したい場合や、防災アプリで公共施設の情報を活用したい場合などです
- データ仕様を策定する際、本共通データ仕様に掲載されているものついては、掲載しているデータ仕様を採用を検討してください
- 掲載しているデータ仕様の項目に不足があるときには、追加すべき項目とその仕様を提案してください。この提案は、具体的な仕様でも構いませんし、「こんな情報も追加したいのだけれど」という相談でも構いません。但し、ご提案には本協議会に参加することが必要です。
- 提案は、協議会内で共有され、議論されます。議論の結果はデータ仕様に反映され、一般に公開されます
- 尚、前記の記載に関わらず、システム固有の仕様を独自に追加することも可能です。その場合には、準拠規格に記載した命名規則で仕様追加してください。この命名規則に従っている限り、本協議会で将来策定するデータ仕様と、名称が被ることはありません。但し、同じ内容の仕様が別の名前で共通仕様として策定されてしまう可能性はありますので、一般的に使われるであろう仕様は共通化する事を強く推奨します
データ仕様に含まれる仕様
本ホームページで公開しているデータ仕様には以下のものが含まれます。
- データモデル(帳票のひな形)。例えば、「法人を表すデータモデルには”法人名”と”住所(所在地)”のAttributeを定義しておこう」などというものです
- Attributeに登録する「Enum(用語)」。例えば、「金網や木材で作られた塀は”フェンス”と呼ぶことにしよう」などというものです
- 帳票の体系。つまり、帳票間の関係です
尚、データ仕様を策定するにあたっての約束事も公開しています。詳しくは、準拠規格を参照してください