ケーススタディ#3 – FMシステムが直接共通データ仕様の形式の電子データを出力(施設情報) (1/6)

基本的な考え方

 ケーススタディの#1と#2では、FMシステムからcsv形式の電子データを出力し、この電子データを共通データ仕様に変換する例を紹介しました。それらに対しこのケーススタディは、FMシステムから公共施設の情報を直接共通データ仕様に準拠した形式で電子データを出力する形態を想定します。csvファイルは表形式なので、出力する電子データには自ずと制約がありますが、本ケーススタディではそのような制約は無く、複雑なデータも出力可能です。そこで、座標(Polygon)などの例も紹介します。

 本ケーススタディでは公共施設としては呉市にある「吉浦市民センター」という複合施設の二階に入居している「吉浦まちづくりセンター」を想定しました。

 共通データ仕様はNGSI V2という規格に準拠してあり、情報を登録する際にどの情報を先にすべきかという点に特に制約はありません。Entity間にリンクはありますが、リンクを表現する項目は、単にTextの項目にリンク先のEntityのidの文字列を格納しているだけで、実際にリンク先のEntityが存在するかどうかはチェックしません。従って、どの様な順番でEntityを登録しても構いません。また、データモデルて必須となっている項目も、idとtype以外は登録しなくてもエラーにはなりません。つまり、後で登録しても全く構わないのです。

 一方、idやtypeは後から変更できませんから、Entityを登録するよりも先に、idの形式などについて先に決定しておくことが必要条件となります。つまり、包括施設管理の情報の登録を考えると、以下の様な作業の流れになります。

情報登録の手順

つまり、必要なルールを定めて、事前に登録が必要な情報を登録して、運用に入るというプロセスになります。勿論、運用しながら施設や設備の情報を追加登録していっても共通データ仕様上は構いません。

ルール策定の前に

 このプロセスの最初はルールの策定ですが、その前に、このユースケースで使う法人番号や不動産番号などの前提となる情報を整理しましょう。ハリー株式会社は架空の法人です。また、呉市の情報も実際のものとは異なります。

情報の種類情報の内容と想定
管理対象施設広島県呉市の「呉市吉浦市民センター」という複合施設の建物を管理対象と想定します。呉市吉浦市民センターという建物には「呉市吉浦支所」という施設と「吉浦まちづくりセンター」という施設の二つが入居しています。この建物の所管課は呉市の「市民部吉浦まちづくりセンター」という部門であり、吉浦市民センター内に所在していると想定します。
法人名法人名は法人(Organization)に登録が必須な情報です。
 呉市の法人名: 呉市、クレシ、Kure City
 施設管理事業者: ハリー株式会社、ハリーカブシキガイシャ、Harry Corporation
法人番号法人番号は法人(Organization)のidを構成する情報です。
 呉市の法人番号: 9000020342025
 ハリー株式会社の法人番号: 0990123456789
自治体コード自治体コードは自治体の場合に法人(Organization)に登録が必須な情報です。
 呉市の自治体コード: 342025
住所 (所在地)法人や土地に登録が必須な情報です。
 呉市役所の住所: 広島県呉市中央4丁目1-6
 吉浦市民センター: 7370852 広島県呉市吉浦東本町1-7-23
 ハリー株式会社: 7370853 広島県呉市吉浦潭鼓町14-1
不動産ID不動産IDは土地(Land)や建物(Building)のidを構成する情報です。
 呉市役所の土地:     ”0000000001001-0000″
 呉市役所の建物:     ”0000000002001-0000″
 吉浦市民センターの土地: “0000000001002-0000”
 吉浦市民センターの建物: “0000000002002-0000”
 ハリー株式会社の土地: “0000000001010-0000”
 ハリー株式会社の建物: “0000000002010-0000”
施設番号各公共自治体内の施設のIDです。
 市役所: 00000001
 呉市吉浦支所: 01234000
 吉浦まちづくりセンター: 01234567
部門番号法人内の部門番号です。部門(Department)のidを構成する情報です。
 市民部吉浦まちづくりセンター: 0402004
 ハリー株式会社: 0000001

ルールの策定

 このチュートリアルでは以下の様にルールを設定しました。尚、このルールは都市OSの運営主体が決めるのですが、データ交換する都市OS間でidが重複しないなど、整合している必要があります。本チュートリアルはデータモデルの説明で例示しているものを採用しました。

ルールの対象ルール
Facility(施設)の単位本データモデルはひとつの建物を複数の施設に分けて管理できる様になっています。但し、実際の運用では、建物単位で施設を管理する場合もあると思われます。どの様な単位で施設を定義づけるかは、自治体と事業者で調整して決定する必要があります。本事例の複合施設では、施設によって開館時間が違う、主管部門が違うなどを想定し、「吉浦まちづくりセンター」は2階から4階を占有していると仮定しました。
idの文字列idの採番ルールの内、データ仕様で決められていないものに関するチュートリアル用のルールです
施設 (Facility)データモデルの説明の例を踏襲し、”urn:ngsi-ld:Facility:”の後ろに日本の国名コード2桁(“JP”)と呉市の法人番号13桁が続き、更にハイフンを挟んで施設IDを並べた文字列のとします。例えば、呉市の市役所の吉浦市民センターに入居している呉市吉浦支所は”urn:ngsi-ld:Facility:JP9000020342025-01234567″となります。
統計 (FacilityStatistics)“urn:ngsi-ld:FacilityStatistics:”の後ろに所有法人の国名コード2桁と法人番号13桁と統計の種類を表す8ケタの番号の後に、6桁の通番をハイフンを挟んで並べた文字列のとしました。例えば、呉市の市役所の吉浦市民センターに入居している呉市吉浦支所は”urn:ngsi-ld:FacilityStatistics:JP9000020342025-01234567-012345″となります。
部位 (BuildingComponent)“urn:ngsi-ld:Building:”の後ろに建物の不動産IDと建物内の通番をハイフンを挟んで並べた文字列のとしました。通番は施設管理事業者が採番すると想定しています。例えば、呉市の市役所の吉浦市民センターの正面階段は”urn:ngsi-ld:BuildingComponent:0000000002002-0000-002″などとなります。
設備 (Device)“urn:ngsi-ld:Device:”の後ろに国名コード、メーカの法人番号を並べ、設備のシリアルナンバーを並べた文字列のとします。例えば、吉浦市民センター1階の正面入り口の空調設備は”urn:ngsi-ld:Device:JP7010001008844-ACB-010101010101-XYZ”とします。
機種 (DeviceModel)“urn:ngsi-ld:DeviceModel:”の後ろに設備のメーカの法人番号と型番ーをハイフンを挟んで並べた文字列のとする。例えば、吉浦市民センター1階の正面入り口の空調設備の機種は”urn:ngsi-ld:DeviceModel:JP7010001008844-DEF-1010101-VWX”とします。