事例紹介: DXを求める調達仕様

デジタル化を要求する包括施設管理の調達仕様

 包括施設管理業務委託の公募型プロポーザル実施時に仕様書案には共通データ仕様を明記していないものの、デジタル化を要求している仕様を紹介します。尚、各事例に記載した説明は事務局で執筆したものであり、協議会で合意したものではありません。もし、誤認や記述漏れなどがありましたら、コメントを頂ければ助かりす。

■茨城県土浦市

 2024-09-26に「土浦市公共施設包括管理業務委託に係るプロポーザルの実施について」が公開され、電子データの提供を求める内容の記述がありました。

 「土浦市公共施設包括管理業務委託仕様書」の特徴ある記載は以下となっています。

第2章 一般事項

15 報告書等
受託者が本市に提出する報告書等については、関係法令等で定めがあるもの、特記事項によるもの及び本市が指示するもののほか、次の電子データを提出する。
なお、定期での提出のほか、総括監督課からの提供の求めに都度応じるものとする

(2)業務報告書、不良箇所管理表(月間)、保守点検結果報告書
 施設ごとに作成し、原則として、作業等実施月の翌月15日(提出日が土、日、休日の場合は翌営業日)までに、総括監督課及び施設所管課に提出する。
イ 不良箇所管理表
 各施設の不良箇所と内容、緊急度、修繕等の期限(目安)及び修繕費用の概算等をわかりやすく一覧表等に記載し、不良箇所の位置や状況を示す図面や写真等を添付する。なお、業務期間中における不良箇所や対応経緯等を継続的に把握するため、同じ箇所について複数年にわたる指摘の履歴や対応結果等も含めてデータ更新を行うものとする

 尚、実施要領などの全文については、以下をご覧ください(PFI協会会員専用のページです)。

  https://pfikyokai.or.jp/pfi-data/houkatsu/unit/gov/08_ibaraki/tsuchiura/240926/index.html

 記載ヶ所は委託仕様書の6ページ目です。

 特徴は、提出を求める電子データの内容を具体的に記載している点です。特に、「同じ箇所」で不具合が繰返し発生する様な状況を分析するためのデータを求めている点が特徴的です。これを実現するためには共通データ仕様で実現している様に、報告書を記述する担当者が交替しても同じ「部位」や「設備」である事を判別できる様にしておくことが必要です。尚、「同じ箇所」が何を指すのかについては色々なケースが考えられるため、それぞれのケースに対応できる様にデータ仕様を策定しておく必要があります。詳しくはケーススタディ#5にも記載があります。

 尚、データ仕様は受託者独自のもので構わないため、事業者が交替した際には分析は困難ですので、「業務期間中における不良箇所や対応経緯等を継続的に把握」するとしてあります。

■熊本県山鹿市

 2024-07-01に「山鹿市公共施設等包括施設管理業務委託に係る規格提案書の募集について」が公告され、電子データの提供を求める内容の記述がありました。

 「山鹿市公共施設等包括管理業務委託共通仕様書(案)」の特徴ある記載は以下となっています。

第1章 総則

24 報告書等の提出
受託者が本市に提出する報告書等については、関係法令等で定めがあるもの及び本市が指示するもののほか、次により書類を提出する。また、各様式については本市と協議して決定するものとする。
(1) 定期報告
 受託者は予算の執行状況を毎月本市へ報告する。報告の際業務に応じて下記書類を添付する。

業務内容添付書類
ア 修繕業務修繕前後の写真
イ 敷地等の維持管理業務業務前後の写真及び業務箇所の地図
ウ 施設の計画的修繕業務修繕前後の写真
エ 設備保守管理等業務成果品
オ 本業務にかかるデータ整理業務成果品
カ 市営住宅空家修繕業務修繕前後の写真(必ず住戸ごとにまとめ、修繕箇所がわかるようにすること)
キ 市営住宅退去後確認業務退去跡住戸の写真(残存物処分を行った場合は処分前後の写真も添付すること)
ク 高齢入居者の見守り支援巡回日報等

(2) 随時報告
 受託者は(1)定期報告以外にも、本市の求めに応じ報告しなければならない。
(3) データ入力等
 修繕履歴台帳等を作成し、データ入力・取りまとめを行い、本市の求めに応じ報告しなければならない。
(4) 電子データの提出
 受託者は、報告書等について可能な限り加工・分析がしやすい電子データで、統括監督職員に提出すること。データの形式等、詳細については協議により決定する。

(5) 検査・確認
 本市は、受託者の提出した業務報告の検査又は確認を行う。また、仕様に適合しないとき又は不都合と認めたときは、受託者に対し業務の手直しを命ずることができる。
26 公共施設マネジメントシステム等によるによる情報蓄積
施設マネジメントツール等において、保守点検業務や修繕業務等のデータを市と受託者とで共有するシステムを運用すること。(データベース化)

 尚、実施要領などの全文については、以下をご覧ください(PFI協会会員専用のページです)。

  https://pfikyokai.or.jp/pfi-data/houkatsu/unit/gov/43_kumamoto/yamaga/240701/index.html

 記載ヶ所は委託仕様書の8~9ページ目です。

 特徴は、電子データの提出を求めている点とシステムの運用を求めている点です。特にデータベース化を明示的に求めている点が重要です。このデータベースの運用により、提出する電子データが幅広い要望に応えられることになります。但し、データ仕様は受託企業独自のものでも構わないため、事業者が交替すると電子データの内容が変わりますので、分析が難しくなります。

■山口県宇部市

 2024-06-12に「宇部市公共施設等包括管理業務委託公募型プロポーザル実施要領」が公告され、電子データの提供を求める内容の記述がありました。

 「宇部市公共施設等包括管理業務委託仕様書」の特徴ある記載は以下となっています。

第1章 総則

20 報告書等の提出
受託者が本市に提出する報告書等については、関係法令等で定めがあるもの及び本市が指示するもののほか、次により書類を提出する。なお、各様式については両者が協議して決定するものとする。

(3) 電子データの提出
受託者は、報告書等について可能な限り加工・分析がしやすい電子データで、統括監督職員に提出すること。データの形式等、詳細については両者が協議により決定する。

22 公共施設マネジメントシステムとの情報共有
受託者が提供する公共施設マネジメントシステムを用いて、保守点検等業務や修繕業務等のデータを共有することが可能であれば、その手法を提案すること。

 また、審査基準は「宇部市公共施設等包括管理業務委託に係る公募型プロポーザル審査選定基準書」の中で以下となっています。

審査項目審査要素配点
(9)追加の独自提案有益で特徴のある積極的な提案
・総合管理計画、個別施設計画の進捗の支援、中期保全計画作成、公共施設マネジメントシステムへの修繕、点検データの一元管理等
50
合計400

尚、実施要領などの全文については、以下をご覧ください(PFI協会会員専用のページです)。

  https://pfikyokai.or.jp/pfi-data/houkatsu/unit/gov/35_yamaguchi/ube/240612/index.html

 特徴は、データの共有について積極的な提案を求めている点だと思われます。審査基準でも提案に対し50/400の配点があります。

包括施設管理と指定管理の共存事例

 自治体によっては包括施設管理業務委託の制度と指定管理の制度の両方を同時期に使い分ける場合があります。ここでは、そのような場合の仕様書の記載事例を紹介します。尚、各事例に記載した説明は事務局で執筆したものであり、協議会で合意したものではありません。もし、誤認や記述漏れなどがありましたら、コメントを頂ければ助かりす。

■埼玉県鴻巣市

 2024年7月付で公開された「鴻巣市立市民センターの指定管理者を募集します」に包括施設管理にて実施する業務を切り分ける旨の記述がありました。

・鴻巣市立市民センター業務仕様書

8.業務内容

(2) センターの施設維持管理業務に関すること
 指定管理者は、次の事業を行うこと。業務遂行にあたっては、14頁以降業務水準を基礎とし、事業の実施詳細は、事業計画書にて配置体制・頻度フロー等にまとめ、提出することし、協議が整ったものを実施するものとする。
ア 施設の適正な運営のため、清掃、施設・設備点検等の保守管理及び修繕等を行うこと。なお、施設・設備点検等の保守管理及び修繕等の一部については、「鴻巣市包括施設管理業務委託」受託者(以下、「包括受託者」という。)が行います。(別紙のとおり)
③電気、空調、給排水等設備管理
・館内の電気設備、空調設備、給排水衛生設備等の各設備の日常巡視点検を行うこと。なお、施設及び施設に付帯する設備に不具合等が発生していることが判明した場合は、包括受託者が修繕対応するため、包括受託者まで連絡すること。

⑤ 修繕
・備品については、消耗、劣化及び破損又は故障により損なわれた機能を回復させるため、1件10万円(税込)以下を対象とした修繕を、協定で定めた予算額以内で執行すること。なお、1件10万円(税込)を超える修繕は市が行うが、緊急を要する修繕については、市と協議の上、修繕できるものとする。なお、施設及び施設に付帯する設備の修繕は包括受託者が対応するため、修繕が必要な場合は、包括受託者に連絡すること。

9.経費等について
(1) 予算の執行
ア 予算は、以下のとおり執行すること。
② 修繕費は、1件10万円(税込)以下について、器具等の実施するものとする。ただし、緊急を要する修繕は、1件10万円(税込)を超えるものであっても、市と協議のうえ修繕できるものとする。施設及び施設に付帯する設備の修繕は、包括受託者が状況を確認し、市の負担において、修繕を実施する。

14.業務を実施する際の留意事項
次の各項目に留意して円滑に実施すること。

(6) 施設の維持管理に当たっては、包括受託者と協力し、実行すること。

・管理業務水準

2 樹木及び花壇等の管理業務

(2) 管理の水準
① 花壇管理
 イ 除草(包括受託者が実施)
② 樹木管理(包括受託者が実施)

 ア ・・・以下略

3 施設設備の管理業務
(2) 管理の水準
① 消防設備(包括受託者が実施)

 ・消防法の規定及び・・・以下略

④ 空気調和設備(包括受託者が実施)
 ・空調設備の点検を・・・以下略

・業務委託契約一覧表

委託業務名令和7年度以降の実施者
指定管理者包括受託者
清掃業務(日常・定期)
機械警備業務
植栽管理業務(花の植え込み)
ピアノ調律作業
自動体外式除細動器(AED)
印刷室内印刷機リース
自動ドア保守点検業務
緑地管理業務(高中木剪定・低木剪定・除草)
自家用電気工作物保守管理(年次・月次)
消防設備点検業務(総合・機器)
昇降機保守点検業務(法定・定期・遠隔)
空調機器点検業務(保守・清掃)
空調機器点検業務(フロン)(3年に1度)※R5に実施
屋上ドレーン清掃業務
建築設備定期検査
建築物定期報告業務(2年に1度)※R5に実施
害虫防除・消毒業務

 尚、全文については、以下をご覧ください(2024-11-07現在)。

  https://www.city.kounosu.saitama.jp/page/25219.html