包括施設管理における使い方 (4/7)

共通データ仕様に含まれるデータモデル

 共通データ仕様に含まれるデータモデルは、以下の3種類に分類されます。

組織や建物などの「モノ」を登録するデータモデル報告や不具合(案件)などの「コト」を登録するデータモデル統計情報を保存するデータモデル
 法人・部門・施設・建物・土地・部位・設備などの情報を登録するデータモデル群です。これらのデータは更新される事が少ない事が特徴です。 報告・案件(不具合)などの情報を登録するデータモデル群です。これらのデータは不具合や修繕などのコトが発生するに従い随時追加されたり書き換えられたりします。
 これらのデータは左記の組織ゃ建物などの情報を参照しながら登録/参照されます。
 施設や建物の利用状況や費用の状況を月毎や年度ごとなどに集計して保存する目的のデータモデルです。
 一度登録すると訂正以外では殆ど更新されません。
 これらのデータも左記の組織ゃ建物などの情報を参照しながら登録/参照されます。

 以下、それぞれのデータモデルの活用方法について記載します。

組織の登録

 組織を登録するデータモデルは「法人(Organization)」と「部門(Department)」です。「法人」は文字通り法人の情報を登録するデータモデルであり、法人名や法人番号などが登録されます。部門は法人内の部門の情報を登録します。現在の共通データモデルでは部門は階層化していません。これは、必ずしも法人内で部門として定義されているものだけでなく、コールセンターや窓口など外部からは部門として見えていても、法人内で公式に組織として定義されていないものも表現できる様にしているためです。

 施設管理においては、オーナーの情報を登録します。公共施設の管理であれば、自治体などがオーナーです。部門としては、施設管理の契約対象となっている物件の所管部門となっている部門が対象です。勿論、所管部門以外を登録しても構いません。

 尚、オーナー以外にも再委託先の法人や施設管理事業者自身の情報も登録できます。再委託先の法人を登録しておけば、事業者が交替時する際に再委託先の住所(所在地)や連絡先を引き継ぐ事が可能です。

施設管理の対象建物の登録

 施設管理の対象物を登録するデータモデルは「施設(Facility)」、「建物(Building)」、「土地(Land)」、「部位(BuildingComponent)」、「設備(Device)」、および「機種(DeviceModel)」です。まずは、「施設」と「建物」と「土地」との関係を見てみましょう。ここでは、施設管理業務の管理単位は「建物」であるとします。尚、建物は建物と建物に含まれる棟(棟)を分離して登録する事も可能ですが、単純化するために棟単位の情報は一旦省略し、後で別に説明します。

 建物として例えばビルディングを想定しますが、大きなビルディングではなく小さな公民館などでも考え方は同じです。

 ビルディングには複数の施設が入居する事があります。例えば、一階にはコンビニが入り、二階には自治体の市民センター、三階には公民館が入るなどです。この場合は下図のように施設のデータを三件登録します。

 大きい建物になると、複数の土地に跨って建築する事があります。下図の例では三つの土地に跨って建物が建築されている例です。尚、土地を登録する時には一件目の土地には建物の住所として採用する住所の土地を登録します。

 データの価値が下がるので推奨しませんが、施設管理だけにデータを使うのであれば仕様的には下図のように施設と建物と土地のデータを一件ずつだけ登録する方法もあり得ます。この場合はお客様と事前に合意しておく必要があります。データの価値が下がるという意味は、他の目的に使えないという意味です。例えば、施設の情報を省略して一件にすると、観光や市民サービス向けのデータに利用できなくなります。

 土地のデータを省略する時には、土地の住所は建物の住所を登録する必要があります。面積などのデータについては、どの様に扱うかについてもお客様と合意しておく必要があります。もし、敷地全体の面積を登録すると、後で土地の情報を正しく分割して登録しなおすと、面積の値が変わってしますことになります。

建物の部位や設備の登録

 ここでは「建物」と「部位」「設備」「機種)」との関係を見てみましょう。

 部位や設備は現実には建物だけに付随するモノではなく、屋外に設置される場合もあります。しかし、現在の共通データ仕様ではすべて建物に付属しているとして管理します。これは、独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター (DADC)スマートビルプロジェクトで建物に関する何らかのデータモデルが提示されるのではないかと考えているためです。共通データ仕様の基本方針は各種標準やガイドラインに準拠することですから、IPAのデータモデル公開後に共通データ仕様も何らかの強化が必要となる可能性があるので、その際の影響をできる限り抑えるために現在の共通データ仕様は細かな仕様の策定は避けてあります。

 「部位」と「設備」のデータモデルはよく似ていますが、設備はメーカーが作った製品を設置する事を想定していますので、「機種」の情報を登録できます。下図の例では”ひぐまくん”という空調機器が複数の場所に設置されています。部位については、建物内の全ての部位を登録する必要はありませんが、設備は管理対象となっているすべての設備を登録する必要があります。尚、登録する時期については共通データ仕様では規定しておらず、事前に登録する事も業務の遂行と並行して登録する事も可能です。

棟の登録

 学校や公営住宅の様に建物が複数の棟から構成されている場合があります。12条点検の報告書では棟毎に床面積などの報告を求めているため、共通データ仕様では棟も「建物」として登録する事を可能としてあります。実際に棟毎に登録するかどうかはオーナーや事業者の判断に依存します。尚、建物内外の場所の名称の登録や土地へのリンクは建物全体を表す「建物」に登録します。但し、棟毎にも登録する事を妨げるものではありません。