事前検討 — 管理単位の検討
本共通データ仕様では、「建物 (Building)」というデータモデルは、共同住宅や学校の様に複数の棟を含む事が可能である様に策定してあります。また、「施設 (Facility)」というデータモデルはこの建物に複数入居できる様になっています。例えば、ひとつの複合施設に小学校と児童クラブと備蓄倉庫が入居している様な場合を想定しています。一方で、各自治体が施設管理を行う単位は、本データ仕様とは関わりなく、管理業務に合わせて策定していると思われますので、本共通データ仕様における建物や施設の単位と施設管理を行う単位の関係を予め明確にしておく必要があります。
以下、幾つかのパターンに分けて整理したいと思います。ひとつの自治体内でも、色々なパターンが混在していると思いますので、施設ごとに確認しておく必要があります。
■建物単位で管理
建物が一棟で構成され建物全体がひとつの施設で占有されている場合で、自治体としてもひとつの建物と敷地をひとつの管理対象とする基本的なパターンです。その建物が特定建築物の場合の12条点検の報告もこの建物の単位で報告されていると思われます。
この場合は、本共通データ仕様に特に考慮するべき点はありません。「建物」と「施設」を一件ずつ登録する事になります。敷地は「土地(Land)」と言うデータモデルで登録します。敷地が複数の土地に分かれている場合、全ての土地を登録する事も出来ます。その場合、建物の住所に一致する

建物が複数の棟で構成されていいても同様です。
データ仕様に特に考慮するべき点はありません。「建物」と「施設」を一件ずつ登録する事になります。
(※※12条点検の様に棟ごとにも情報登録できるような仕様拡張は現在議論中です)

■建物を複数の施設に分割して管理
建物と敷地の主管部門が一つの建物内で複数あるケースです。植栽や駐車場などの共用部分や受電設備などの共用設備含めてどちらに属するのか決めておく必要がありますので、可能であれば建物単位にまとめて管理する事が望ましいですが、共通データ仕様上は建物と施設の両方に施設IDを振る事は可能としてあります。また、建物の部位や設備も建物単位で登録する事も、施設単位で登録する事も可能としてあります。
右図の場合、施設管理で使う施設IDは100番で、利用実績の集計などは101番と102番で分けて集計するなどの使い方が可能です。

■建物を棟単位に分割して管理
建物や施設が複数の棟が構成させる場合で、棟ごとに分けて施設管理を行うケースです。このケースについては現在の共通データモデルでは表現できません。現在、施設管理WGにて検討中であり、近日ドラフト公開予定です(2023-07-31現在)。建物全体と個々の棟の両方に施設IDなどの情報を持てるようになる見込みです。

■建物の一部だけが管理対象の場合
施設の一部に施設が入居している場合も表現できます。例えば、民間の建物に公共施設が入居している場合などを想定しています。建物の管理は貸し手の民間企業が行うと思われますが、例えば施設カルテの作成の際などに必要となると考えて、このケースも表現できる様にしてあります。

その他の事前検討項目
その他にも事前に幾つかの事を決めておく必要があります。以下、代表的なものを列挙します。
- 不動産ID: 土地や建物には不動産IDが振られています。不動産IDは登記した際に振られる不動産番号から作られます。但し、自治体が保有する土地や建物の場合は、登記が免除されている場合があり、不動産IDが未確定である可能性があります。登記していない土地や建物の不動産IDについては、現在国土交通省が中心となって検討中です(2023-07-25現在)。本共通データモデルでは土地と建物には不動産IDがある事を前提としているので、仮の不動産IDをどの様に割り当てるのかを決める必要があります
- 電子帳票の登録場所: 本共通データ仕様では、帳票をpdfなどにより電子化して保存した場所を登録する事が出来る様にしあります。保存した場所の登録方法としては、ファイル名とフォルダのパスを登録する方法と、urlを登録する方法の両方を用意してあります。保存した場所を登録するかどうか、登録するとしたらどちらを利用するかを決める必要があります
- 電子データの登録方法: 本共通仕様に準拠した電子データは日本語を含むテキストデータですから、一般的なファイルに格納する事も、エリア・データ連携基盤のデジタル庁の推奨モジュールであるFiware/Orion (ファイウエアオリオンと読みます。単にファイルウェアと呼ぶことも多いです) に登録する事もできます。データを参照するにはFiwre/Orionに登録するか、或いは共通データ仕様をcsvなどに変換する必要があります。逆に、csvで保存しておいて、後で一括して共通データ仕様に変換しても構いません。但し、Attributeに登録するEnum(用語)については変換が難しいので、最初から準拠しておく事が望ましいです
補足説明
■施設の定義について
政府がオープンデータのデータモデルとして定めている「自治体標準オープンデータセット」では、医療機関、観光施設、介護サービス事業所、子育て施設など、建物ではなく、サービスを提供する機能を表現しています。本共通データモデルでは、自治体標準オープンデータセットを踏襲し、サービスを提供する機能に対応して施設を定義しています。また、近年は民間のビルの一部に自治体のサービス窓口を設置する事の多いため、この観点でも建物と施設を区別してデータモデルを分けてあります。